MOTHER3 プレイ記『鉄の温もり樹々の冴え』(2)
『MOTHER3』
(C)2006 SHIGESATO ITOI/Nintendo
テリの森
フリントが村の広場へ駆けつけると、村人達が状況を説明してくれた。
「このまま燃えつづければ、村を捨てて逃げ出さねばならないかもしれない」
「燃えているのは村の北西に広がるテリの森。木こりのライト親子が心配だ」
フリントには今なすべきことがすぐにわかったが、向こう見ずではないのでひとまず辺りを調べて回った。
火事を報せる鐘を鳴らしていたのは、常人の4倍以上の身長の男だった。が、なぜそんな体格なのかは今はどうでもいいことらしかった。
足元に転がっている邪魔っっけな石コロに見えたのは、ナッツだった。食べると体力が回復するのだろう。フリントは画面内のすべてのナッツを集めて回った。
さらに、ナッツが落ちてないか、自宅までいったん戻ってみた。火事はこの際、そのままにして。ナッツは落ちてなかったが、せっかく自宅まで戻ったので一休みした。ヒットポイントは満タンだったにもかかわらず。
トマスと男二人、一つのベッドで過ごすご休憩を終え、フリントは再び村の北、クロスロードへ戻った。
ナッツが復活していた。
「これを繰り返せば、限界までナッツが持てるな‥‥」
とフリントは考えたが、この世界には物をなんでも99個も持ててしまうといった理不尽は存在しないので、拾うのはやめて先を急いだ。
「まるで運動会のようだ。あまり好きにはなれないな」
眉をひそめてプレイヤーはそうつぶやいた。
祈り場
テリの森の入り口には〝イノリバ〟と呼ばれる建物がある。普段は億劫がって立ち寄らないし、たまに行っても居眠りをするのがフリントの常だった。
そんなフリントが〝イノリバ〟へ立ち寄って祈りを捧げたのも無理からぬことと言えた。森から立ち昇る煙と炎は、すでに尋常ならざる大きさになっていたからだ。
〝イノリバ〟ではプレイヤーの名を神に問われた。
プレイヤーは真摯に自分の名を述べ、この物語が 〝3作目問題〟 を回避していてくれることを切に願った。
祈りを終え、火の粉をかいくぐり、襲ってくる蝙蝠を払いのけ、フリントはライトの小屋へと急いだ。
火吹き虫
ライトの小屋までもう少しというところで、フリントは豚の仮面をつけた怪しい男を見た。
豚の仮面をつけた太った男は金属箱から怪しげな虫を放出し、どこかへ消えた。さらにフリントは、倒れているライトを見つけた。
息もたえだえにライトは
「この虫が森に火をつけているんだ」
と言った。フリントが来るまで、一人でこの火吹き虫たちと戦っていたらしい。
ライトは続けた。
「小屋の中にはまだ、息子のフエルが‥‥」
「あとは俺にまかせろ」
そういうと、フリントはライトの介抱をトマスに任せ、火吹き虫の群れの中へ飛び込んでいった。
黒焦げ
フリントは火吹き虫たちを倒し、燃えさかる小屋へ飛び込んだ。羽の生えた怪しげなネズミが襲ってきたが難なく撃退し、フエルを抱きかかえ崩れ落ちる小屋から間一髪、脱出した。
幸いにして二人ともケガはどこにもなかった。ただ、すすで体中が真っ黒にはなったが。
「まるで〝博士と助手〟コントみたいだ」
とフエルは笑った。
無事を喜ぶ人々があまりに
「まっくろだね」
と言うので二人して温泉に入ったものの、首から上のすすは落ちなかった。フリントもフエルも、気が動転して〝顔を洗う〟のを忘れてしまっていたのだ。
〝イノリバ〟まで戻ると、フエルの無事な姿を見たライトの目に涙が浮かんだ。ここでもしきりに
「すすで真っ黒、すすで真っ黒」
と連呼されたので、プレイヤーは
「伏線だろうか?」
と、いぶかしんだ。
ここで、フリントとライトが古馴染で、仲の良いケンカ友達であることがプレイヤーに明かされた。
「それは道中、トマス他のNPCに語らせて良かった情報なんじゃないか?ここで唐突に後付け設定を披露されても‥‥」
と、プレイヤーは口を尖らせた。
「シゲサトのシナリオには、そういう唐突な部分がままあるよな。アナとのダンスとか、プーが仲間になるくだりとか」
と、プレイヤーはさらに一人ごちたが、
「ま、いいか」
とつぶやきゲームを再開した。
ライト達と無事を祝っていると、雨が降り出した。これで火事も消えてくれることだろう。
予兆
村に戻ったフリントはイサクという村人から気になる話を聞いた。森から逃げる途中、ヒナワと息子たちを見かけた、と。
そして遠くからドラゴの悲鳴が聞こえ、さらに別の悲鳴が続くのを聞いた、と。
降りしきる雨の中、フリントは自宅へ駆け戻った。BGMは無い。ただ、雨音と水溜りを跳ね上げる自分の足音が響くばかりだ。
ヒナワ達はまだ、戻っていなかった。軒下にいたのは一匹の伝書鳩のみ。
プレイヤーは、一章のサブタイトルを思い出していた。
「とむらいの夜」
夜はまだ明けていなかった。雨は降り続いていた。
– 続く –
P.S.
あ~。やっぱ、小説を書いたことのない人間が三人称視点で書くのは無謀でした。 読み苦しくてすんません。
前ブログのコメント欄から転載
イシイ すごいシリアスなシーンで「悪ふざけ」を入れたくて仕方がない、
そんなマザーが大好きです。
小説楽しみにしております。桝田道也 >悪ふざけ
2の「 キ モ チ イ イ 」とか好きです。お前は戦闘中に何を感じているんだと。
ヒッチココックの映画術だったと思うけど、
「ユーモアを忘れないこと」
という項があるとかないとか(また聞きなのでよく知らない)
ほんの少し笑いがあると、シリアスなシーンがぐっと引き立つんですよね。【トラックバック】第一章(1):テリの森の火事 http://mother3.at.webry.info/200604/article_2.html 双子の父、ブラントの残るタツマイリ村は、テリの森の火事で大変な騒ぎになってた。 MOTHER3~バルの冒険記~