『やいやいや鷹山』について
コミック乱 2008 年五月号に掲載されました。
知事効果の余韻が消える前に描くしかない!的に(笑)
作中でも
「それは言わない約束……」
と うやむやにしましたけど、江戸生まれ江戸育ちだろうから上杉鷹山は宮崎弁をしゃべれなかったんじゃないかと思いますね。
使用人が全員、宮崎人だったから……と、マンガの理不尽な点を強引に解釈するメソッドを各自で発動させてくださいませ。
作中の宮崎弁は、実は少し現在の宮崎弁とは違います。 私は宮崎出身なんで自分のしゃべっていた通り書くことはできるんですけど、 この作品で必要だったのは他県人が読んで宮崎弁だと認識できる方言、なんで。 そこは割り切って。マスコミ関西弁、マスコミ名古屋弁、マスコミ東北弁みたいなもんですね。
まず、一人称で〝オリ〟なんて使ってる人間は私は見たこと無いです。 自分らの同世代はもちろん、親の世代も含めて。 祖父・祖母の世代だとどうかわかりませんが。
〝どこんかしこん〟……これもわかりにくい方言っぽくするため無理やりこう書きました。〝どこもかしこも〟を宮崎弁で発音したらたしかに〝どこんかしこん〟になるだろうけど、普通は〝どこでんそこでん〟を使います。
〝ちんがら〟……私の周囲の同世代の人間は使ってなかったですね。世代差・地域差があるのかも。 北海道人でも〝なまら〟を使わない層が存在するらしいですし。
〝じゃけん〟……宮崎弁でも〝じゃけん〟は使うけど、この文脈なら〝じゃかい〟を使うのが普通かと思います。
どしゅんこしゅん……使わないですねえ。聞いたこと無い。なんとなく薩摩弁っぽいと思いましたが。
まあ、そういうこまかいことを挙げてもキリがないのでここらでやめます。
上杉鷹山は難しい
この作品、没になりかけました。正確には、しばらく保留……という状態に。
「面白いんですけど、上杉鷹山という人物が、雑誌の想定読者層的に、難しい。ので、すみませんがちょっと保留で」
と。
カーター大統領が尊敬する日本の政治家に挙げたために、 鷹山ブームが起きたことがあったんですね。
カーター大統領を知っている世代より上の人間にとっては非常になじみ深い…… 人によっては詳しすぎるくらい知られているんですよ>上杉鷹山って。 (私ですか?この作品を描くまで、米沢藩を建て直したってことと例のフレーズくらいしか知りませんでした。じ~てんしゃそ~ぎょお~)
で、コミック乱の主要想定読者って、ずっぽしその世代なんで、うかつなマンガは描けないし1エピソードで終わらすには物足りないと思われるのでは、しかし続き物にするわけにも……というわけですな。
結局、掲載にゴーが出たのはせめて今年の上半期のうちに載せておかないと機を逃してしまうという判断だったのではないでしょうか。知事様に感謝。
この作品を描くにあたって、伝記にザッと目を通したんですが、たしかに1エピソードで終わらすにはもったいない人なんですよね。普通にドラマのある人生を送っている。ギャグにしにくいけど。
ちなみに、鷹山が梨の木を植樹したという事実はありません。
家老たちが鷹山に糾弾状を突きつけたとき、 大殿様(上杉重定)は実際には別室でした。 (史料に、重定に相談してくると言ってその場を逃れようとする鷹山の着物の裾をつかんでひっぱったという記述があるらしい。ちょ、おま、殿様をなんだと……) ここは、物語のためにあえて史実を無視しました。
↓試し読みがあります。
>やいやいや鷹山 | ブログ桝席
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