板橋区立美術館『谷文晁とその一門』
> 文晁一門が幕末にどのような役割を果たしたのかを具体的に探るため、その弟子たちの作品を集めて展覧する初めての試み
- http://www.city.itabashi.tokyo.jp/art/schedule/e2007-03.html
- 2007年9月8日(土)~10月21日(日)
- 一般600円 / 高・大生400円 / 小・中学生150円 / 20名以上団体割引、65歳以上高齢者割引、身障者割引あり / 毎週土曜は小中高生無料
以前に谷 文晁を主役にしたマンガを描いたことがあります。
描くまでは名前しか知らない人だったのですが、調べてみたら中々面白そうな人物だったので、 いつか作品を画集ではなく生で見たいと思っていました。
で、近所の板橋区立美術館で谷 文晁一門の展覧会が催されたので、喜んで観にいってきましたよ、という話です。
門下の渡辺崋山の作品もありました。3点あったと思うのですが、リンク先のページでは2点しか載ってないですね。うーん、私の記憶間違い?
画集で見て前知識として知ってはいたけど、本当にコロコロと画風が変わった人ですね。文晁って。
技法の研究と吸収に貪欲だった人なんでしょう。あやかりたいものです。
しかしながら、芯はあまりぶれてないんですよね。たしかに西洋画や中国画や同時代の友人画家の影響は見られるんですが、取り入れる技法を上手に取捨選択しているんですよ。絵に無理が見られない。自然体で描いている感じ。
個人的には、文晁の得意とされる細密描写がふんだんな作品より、ユルユルしてたり荒々しかったりする〝あまり時間をかけずに描いたように見える〟作品のほうが好みでした。
一番良かったのは、『離合山水図』です。二枚の掛け軸で、並べてもよし・単体で飾ってもよし・左右逆にして飾ってもよし……という離合できる山水図。フワッ ユルッ という雰囲気で、 しんしんと心に染みる水墨画でした。
とはいえ展覧会としては
作品は良かったんですけど、入場料 600 円はちょっと高いように思えました。600 円にしては、作品数が少ない。
400 円だったら大満足、500 円で妥当というのが私の感想。たかだか 200 円の差なんですけどね。でも、500 円を超えるか超えないかというのは心理的に大きく違うんですよ。
解説文は、板橋区立美術館らしい、いつも通りのユニークな良い仕事がなされてました。わかりやすく、視点は鋭く、小気味良い解説文だったと思います。
ただ、それぞれに現代語による訳題を付けたのはやりすぎに感じました。
『○○図』というタイトルではわかりにくいから……という意図は汲めるんですけども。
清水曲河の『謝安東山携妓図』を『東山でデート』と書くのはどうかと……(図録を買わなかったので、記憶を元に述べています。間違っているかもしれません)
大西椿年『狂女図』を『かなしむ母』としたのは、解釈がおかしいような気がしましたし。
この絵が、我が子を失った悲しみのあまり茫然自失して気の触れた女性の様子を描いた絵ならば、すでに悲しみを通り越しているわけですから。
描かれている表情からも悲しむ様子はうかがえませんでした。
訳題に関しては、板橋区立美術館のユニークさが悪い方へ出てしまってて残念でした。
図録について
収録された図版が大きいのは良かったんですけど、2000 円は少し高いと思ったので購入にいたりませんでした。
もっとも、谷 文晁一門の図録ではなく、谷 文晁オンリーの図録だったら買ってたかもしれません。
ほほえましいけど、谷 文二の絵は要らんですわ。