『デジカメでトイカメ!!』 上原ゼンジ
写真の本なのに表紙にも裏表紙にも写真が使われてない、でも幅広のオビに作例写真がたっぷりというおもしろ装丁。
せっかくのアイデア(?)装丁も、
オビを外した状態を書影にするオンライン書店があるとは考えてなかったのかもしれない。
→http://www.bk1.co.jp/product/2799744
ホームセンターや 100 円ショップなどで入手できる材料でチープでキッチュなレンズを作ってデジカメに取り付けて、味のある写真を撮ろうと、そういう本。
100 ページに満たない本だから作例も記事もややボリュームが足りない感じはする。それぞれのレンズも、検索すればより詳細にまとめてるページが見つかりそうだ。
でも、この薄さだからこそのまとまりの良さと手軽さがあった。これなら自分でも出来そう……という、気軽に真似する気になれる本。
文章がライブ感に溢れてていいんですよね。試行錯誤の過程をそのまま文字に起こしてて、工作してる最中の雰囲気が伝わってくる。逆にいえば構成もへったくれもないのでハウツー本としては問題があるような気もするけど、この薄さだからたいして気にならない。
とはいえ、まともなレンズとの比較・検証のページもあり、やることはちゃんとやってるんですが。
基本的にデジタル一眼レフに取り付ける工作が中心なんだけど、後半にコンデジや携帯電話のカメラにつけるチープレンズの工作記事もそこそこあった。チープレンズで安く遊びたい層はコンデジのユーザが多かったのだろう、そりゃ。すぐに飽きがくるコンデジだからこそ、工夫して色々たのしみたいのだ。連載において読者の需要にが高かったのじゃないかと思う。
工作や工夫で試行錯誤するのはフィルム代と現像代のかからないデジカメにこそ向いているという筆者の意見にはまったく賛成。
とはいえ、それを強く主張するあまり、フィルムのトイカメラを持ち歩いてるユーザーを攻撃してる(ように読めてしまう)箇所がチラホラあったのは残念だった。
定番のピンホールに始まり、蛇腹レンズ、ドアスコープ魚眼、ビー玉レンズ……と本書に収録されてる面白レンズによる作例を眺めていると、なんだ、写真だってなんでもアリなんだ……というのがわかる。
絵画だって彫刻だってマンガだって、およそありとあらゆる〝表現〟は〝なんでもあり〟が基本だ。ところがなぜか自分の専門外のメディアになると、ついつい〝こうあるべき〟を気にしてしまうものだ。本書のおかげで、そういう不安から来る無意味な萎縮を払拭できた。すばらしい。
読んでるうちに自分もちょっとあることを思いついた。よし、ちょっと 100 円ショップに行ってくるか!
思いつきがうまくいったら、そのうち撮れた写真をこのサイトで公開するでしょう。うまくいかなかったら、思いつきが何だったのかを含めて一切は闇に……
『デジカメでトイカメ!! キッチュレンズ工房 ピンホールに蛇腹、魚眼でレトロでアナログなデジタル写真を撮ろう!』(単行本・ソフトカバー)
- 著者:上原 ゼンジ
- 出版社: 毎日コミュニケーションズ (2007/6/22)
- 税込価格:¥ 1,680