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概要
小泉八雲『貉』を縦書き英文と横書き和文のマンガにしたものです。
2013 のGW前後にマンガの横書きに関する論争がありました。
- 日本マンガ・アニメの海外普及について – Togetter
- 竹熊健太郎氏「日本漫画が右綴じのまま英字翻訳して海外で一定数売れた事について」 – Togetter
- 竹熊氏の漫画横書き問題について 希有馬氏『中国嫁日記を縦書きにした理由と中国の現状』 – Togetter
興味深いテーマであるので論に参加するより、 作家なら作品で語るべきかと思って縦書き英文マンガを作ってしまいました。
わざわざ、文字幅:文字高さが2:1になるように調整した「縦半角英数」とでも呼ぶべきフォントまで作って(笑)
原作は小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)。
The Project Gutenberg E-text of KWAIDAN: Stories and Studies of Strange Things, by Lafcadio Hearn
の英文を元にしました。
元はパブリックドメインですが、マンガと日本語訳の部分は私の創意が含まれておりますので、 堂々と(?)商品として販売しております。
ご購入
このエントリに掲載している無料試し読み部分は本編 18 ページ中 10 ページ(英語版 9ページ中5ページ、日本語版 9ページ中5ページ、表紙含む奥付除く)です。完全版は各種電子書籍サイトで販売中です。
無料試し読み部分
縦書き英文
横書き和文
作品解説とあとがき
1コマ目、坂が曲がる方向を間違えた気がする(キニシナイ!)
これ以上ないほど……とまでは言えないけど、とくに自分のオリジナル解釈やオリジナルエピソードを加えず最後まで原作に忠実にマンガ化しました。
あらためて読んだら、この原作について、いろいろ思うところがあった。以下のふたつは筆者のつぶやきの転載。
小泉八雲の「むじな」って、単に無地のお面をつけたドッキリのような気がしないでもない。
最後の顔をなでたらノッペラボウになるくだりも手品の心得があればそんなに難しくなさそうだ。
バレる前に灯りを消してるし。
Twitter / mitimasu: 9:52 AM – 25 Apr 13また「むじな」の話。
あれは、読者がむじな・たぬきの話だと思って読んでたら、
のっぺらぼうの話だった!だまされた!
あ!だまされたってことはむじなの話で合ってるわー。
うまいねどーも。
…というメタ視点というか叙述トリック物なのかどうか。
Twitter / mitimasu: 4:02 AM – 11 May 13
原作つきにしたのは、私にゼロから英作文する能力が無かったからです。
『MUJINA』なら日本人に広く知られているので、英文を読めなくてもなんとなく物語がわかると思ったので。
はい。つまり、ぜんぜん英語圏で売れるつもりで描いてません。
とはいえ、文字高さを縮めただけではなく、少しでも読みやすくなるようにあれこれ工夫したのですが。
実際に英語圏の人が見てどうなのかはさっぱりです。身近にネイティブいないしなー。
小文字の扱いをどうするのかとかね。行の中央寄せにするのか、ベースラインを右にするか左にするか。結局、ベースライン右でやってみました。拗音のような扱いですね。
でもやっぱり、アルファベットは横書きのための字形で縦書きには向いてないですよね。小文字のエルとかアイとか……
横書きでも数字の1と大文字I《アイ》と小文字l《エル》が区別しにくいというのがアルファベットの問題点ですが、 縦書きにすると、アルファベットまぎらわしい文字勝負にハイフンとダーシが参加する。正直、まいった。
あと、ソフトウェア(というかコミスタ)におけるフォントの扱いが予想外で、これもまいった。
せっかく文字高さを文字幅の 1/2 にしたのに、縦書き時には勝手に全角ベタ組みにしてしまう。
日本語の組版としては正解で気が利いているのだけど、
今回に限っては余計なお世話でにんともかんとも。
コロンやセミコロンを、私は横に寝かしてほしかったのだけど、これもそういう仕様なのか縦書きだろうと横書きだろうとコロン・セミコロンは強制的に縦にされてしまったり。
そんなことがあったので、もしこのフォントを公開したら説明でえらいめに遭いそうでやってられんと思ったのでフォントの公開はやめることにしました。 (ついで言うと、このフォントはまだ未完成。今回のマンガに使う部分しか作ってない)
和文横書きマンガについて
せっかくだから、議論になってた和文で横書きのマンガも作ってみた。エキサイト翻訳の力を借りながらの拙訳ですみません。
このエントリではページ順が上から下になるように配置してますが、パブーと KIndle では日本語版は左綴じ本として読むページ順になってます。
ただ横書きにするだけでなく、ちゃんとペン字っぽいフォントで中央寄せ組み。そこは西欧コミックっぽさこだわってみました。
なので、よく見るとコマ配置も変わってます。絵を左右反転させるんじゃなくて、コマの左右を入れ替えた。もちろんフキダシ位置も。
おかげで時代劇の海外版にありがちな着物の左前問題も回避。こういうのが簡単にできるようになったコミスタの恩恵。…ではあるのだけど、それはそれで別の問題が。
たとえば会話をしてる人間を左右に振り分ける場合、基本的には対面するように描くわけですよね。
B>( ´_ゝ`) | (´<_` )<A |
物語の都合やイマジナリーラインを守ってそうしない場合もあるのだけど、 とくに問題なければ私は会話する二人が向き合うように配置してます。 その方が会話してるっぽくなるから。でも、横書き時にコマを入れ替えてしまうと、
A >(´<_` ) | ( ´_ゝ`)< B |
――って、互いにアサッテの方を向いてしゃべってる図になっちゃう。 そうなったからといって、マンガが致命的に読めないものになってしまうわけじゃないし、 物語が面白ければ軽く吹き飛ぶささいな問題にすぎない。
実際のところ、この、コマとコマとで背中合わせになってる会話シーンなんて、世のマンガには山ほどある。気にするほどのことじゃない。
が、やっぱりフキダシ位置とか視線誘導やらなんやかんや含めて、 左右入れ替えには左右入れ替えなりの問題が発生するのだった……というのが、 実際にやってみて思い知らされました。
根本的に解決するには竹熊さんの言うように最初から横書き左綴じで描くか、 もしくは英語圏の人に縦書き右綴じに慣れてもらうかのどっちかしかないんだろう。
中国なんか、文革のころに縦書きを排除してしまったけれども、日本のエロマンガのスキャンレーションで縦書きが復権しつつあるような(笑)そうでもないのかな。
まあ、こと言葉に関することはトライ&エラーを繰り返しながらなりゆきにまかせるのが一番うまくいくかと思います。
横書き・左綴じが世界でバカ売れして国内の利益を上回るようになったら、自然とそっちが主流になりますよ。
トライ&エラーの成果がどうだったのか確かめるために、ご購入いただければ作者は感無量でございます。