この記事はミラーです。
第3章
地図調査――浮かび上がる、言うほど迷路じゃない城下町
3.1. 地図の出典
本章の調査において、城下町の地図は正保城絵図を用いました。
出典: 正保城絵図 – 国立公文書館 デジタルアーカイブ
https://www.digital.archives.go.jp/DAS/pickup/view/category/categoryArchives/0300000000/0305000000_6/00
図説正保城絵図―秘蔵城絵図一挙公開! (別冊歴史読本 (76)) (Amazon)
非城下町の地図は明治~昭和前期の国土地理院地図(旧参謀本部陸地測量部、内務省地理調査所による地図)を用いました。
国土地理院
http://www.gsi.go.jp/
地理院地図 (電子国土Web)
https://maps.gsi.go.jp/
Japan 1:50,000(米スタンフォード大学コレクション )
https://stanford.maps.arcgis.com/apps/SimpleViewer/index.html?appid=733446cc5a314ddf85c59ecc10321b41
今昔マップ on the web:時系列地形図閲覧サイト|埼玉大学教育学部 谷謙二(人文地理学研究室) http://ktgis.net/kjmapw/
3.2. 交差点種別の定義について
本調査では地図に記された交差点を種別ごとにカウントし、その傾向を探りました。
したがって、交差点種別について定義が明確でなければなりません。
地図調査の結果について述べる前に、筆者による調査にあたっての交差点の分類、その基準を明示します。
あくまで、この調査のための定義や分類であって、一般的に用いられる定義や分類ではないことをご了承ください。
3.2.1. 十字路の定義
直線道路・曲線道路に関係なく、道が食い違いせずに交差しているものは、十字路としました。ただし、交差の狭いほうの角度が目測で30℃未満であるときは、複雑交差点(後述)として分類しました(図 3.2.1)。
これは、ノーマルな十字路は都市の交通を良くする交差点だという観点に基づきます。交差の角度が90℃から逸脱しすぎたものは、四方に便のある都市の交通を良くする交差点とは見なせません。そういう十字路は無条件に四方に便があるとは言い難い複雑交差点の一種と判定しました。
クランク(鉤型)のある交差点の場合、クランクしている方の道の中心線が交差点の先で遮(さえぎ)られていればクランク十字路として複雑交差点にカウントしました。遮られていなければノーマルな十字路としました(図 3.2.2)。
交差する道が交差点で屈曲している場合、狭い方の角度が90℃未満なら複雑交差点としました。90℃以上なら、十字路としてカウントしました(図 3.2.3)。
十字路で分岐した道が、太い方の道幅よりも近い位置で屈曲している場合、そのひとまとまりをもって、複雑交差点としました(図 3.2.4)。
K字路のような、片側に二本の道が合流している交差点は複雑交差点としました。また、地図上で道幅がわからない場合、目視で食い違ってなければ十字路、食い違っていれば複雑交差点としました。
原則として、四方への通行に便があるものが十字路で、通行不便な点がある四差路は複雑交差点というルールです。
3.2.2. 三差路の定義
丁字路(T字路)もY字路もト字路も、すべて三差路としてひとつの分類としました。
そこが
「一ヶ所のクランク交差点(複雑交差点)」
なのか
「二ヶ所の連続する三差路」
なのかは、二点間の距離が太い方の道幅より長ければ二ヶ所の連続する三差路としました。
短ければ一ヶ所の複雑交差点としました。(図 3.2.5)。
十字路の場合と同様に、交差点の中心から太い方の道幅より近くに屈曲がある場合は、複雑交差点としました。つまりF字路もE字路も孒字路(読めませんか? 私もです!)も複雑交差点です。
3.2.3. 複雑交差点の定義
上記の十字路または三差路の定義に当てはまらないものは、すべて複雑交差点です。
五差路以上のn差路は、すべて複雑交差点です。
広場や虎口付近の枡形に道が合流している場合、関係する交差点をひとまとめにして一ヶ所の複雑交差点とします(図 3.2.7)。
ただし、広場や外枡形が不定形で交差点同士が離れている場合は、いくつかの三差路・十字路・複雑交差点に分けてもよいものとします(図 3.2.8)。
これは作業者の主観で分類を決めました。なぜなら数の少ない例外処理なので、判断のブレによる調査結果への影響は少ないと考えられたからです。
3.2.4. 交差点以外
交差点ではない街路の屈曲については、調査の過程で屈曲の理由が明白ではないものをマーキングしましたが、計測結果を用いた何らかの判断は、行いませんでした。
というのも、城下町、非城下町ともに起伏の激しい場所(すなわち山道)は当然に蛇行しており、屈曲を理由にカウントしても無意味なデータにしかならなかったからです。
行き止まりも同様で、たとえば海で道が途切れている場所では行き止まりがあって当然なわけです。そして、屈曲にしろ行き止まりにしろ、どこまでが地形由来の結果で、どこからが理由不明な屈曲や行き止まりなのか、地図だけで判断するのは困難でした。
したがって屈曲と行き止まりに関しては、計測数を何らかの判定には用いませんでした
虎口・城門についても同様に、計測数を何らかの指標としては用いていません。
これらの屈曲・行き止まり・虎口はの計測数は本書に収録した3.4.1.以降の調査結果へは掲載しませんでした。すでに述べた通り、これらについては厳密な判定が難しく有用なデータにならなかったためです。
3.2.5. 使用ツール
計測には『かちかちかうんたー』を使用しました。
かちかちかうんたー(Windows用exeファイル付き)の詳細情報 : Vector ソフトを探す!https://www.vector.co.jp/soft/win95/art/se347447.html
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