『現代の日本画(3) 福田平八郎』感想
日本画はちっとも知らない私です。 (もっとも洋画だって詳しくはない)
テレビ東京の『美の巨人たち』で取り上げられてる回をたまたま見て、紹介されている作品が自分の好みストライクど真ん中だったので、画集を買ってみました。不勉強ながらそれまで福田平八郎という画家については名前すら知らなかったのですが
一枚の絵:福田平八郎『漣』 – 美の巨人たち<br /> http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/picture/060107.htm
いや、実にツボでした。もう大好きな絵ばっかり。買って良かったです。ウットリしました。
『漣』
代表作『漣』(さざなみ)。銀屏風に群青のみで描かれた水面。写実でありながら装飾的な美しさがあり、伝統的な日本画・それも屏風絵でありながら現代美術のようでもある作品。当時の画壇に衝撃を与えたというのも当然だと思った。
代表作だから、見開きドーン銀箔ドーンと印刷されているけど、正直なところ本のノドをまたいでいるのが実に邪魔でした。小さくてもいいから1ページでノドまたぎ無しの方が‥‥いや、小さいとやっぱり残念か‥‥難しいところですな。
『漣』が凄いのは言うまでもないんだけど、個人的には以下の『鯉』『雨』の方がより好み
『鯉』
水を一切描かずに、層をなす鯉の群れを描いた作品。描かれていない水の存在感の確かさが凄まじい。
『雨』
降る雨の軌跡は描かずに、瓦に生まれた雨脚のみを描く事で夕立の様子を描いている作品。静かな迫力。画面から雨音が聞こえてくるような気がする。ひたすら、美しい。
個人的に瓦のパターンが好きなんで、したがってこの絵も好きというのもあるかな?雨は抜きにしてもやっぱり好きかも。
コロコロ変わる画風
『漣』のようにかなり装飾的な作品もあれば、『鯉』『雨』のように写実を徹底した作品もあれば、なんだか唐突に児画みたいな作品も描いていたりする。
『日の出』
作者は飽きっぽい人飽くなき探求者だったんでしょう。
私も絵柄をコロコロ変えたくなる性分なんで、強く共感しました。
解説も良かった
画集の解説ってものも、担当した人によって出来不出来のはげしいもので、今まで何度も的外れ(に思える)な解説や、作品をほっぽって自分語りを始めちゃう解説者に泣かされてきたものです。
でも、この本の責任編集者である島田康寛氏(京都国立近代美術館勤務)による解説は実にわかりやすく、 丁寧かつ的確な良い解説でした。
>平八郎の場合、トリミングの仕方とアングルの定め方によって、自然の中から面白い形と色の組合せを発見し、これを純粋な造形として表現していくのである。だからそこに安易な情趣性はない。あるのは、その独特な視点によってしか捉えられない自然の実相であり、観者は平八郎の作品を通じて初めてそれを発見し、あらためて自然の実相に感じ入るのである。
第二章「斬新な視点」の解説文より一部抜粋
変な構図の作品が多いんで気になっていたんですよ。この解説でなんとなく理解できました。
本物は……
ところで、『漣』の本物ってどこで見られるんだ?ぬな?所蔵してるのは大分県立芸術会館?遠いよ……