スターシステムの長所と短所を考えてみる
スターシステムの長所はFM音源と……ってそりゃマスターシステムだ、といういらんボケはともかく。
2005/9/30のこの記事 http://www.masuseki.com/index.php?u=my_comic/charadesign20050930.htm のコメントより。
>苦楽まにあ (2005/10/02 01:39)
> しかし、キャラ考えるにしろ
> スターシステムって何故あんまり見かけないんかな。
>
> http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%BF%A1%BC%A5%B7%A5%B9%A5%C6%A5%E0
結論から言えば、スターなキャラを持ってない作家には縁のないシステムだから、です。
詳しく説明すると長くなるんで記事に立ててみました。 以下、引用はすべてはてなダイアリ>キーワード>スターシステムから。
長所について
長所1.本来の意味、すなわち客引きとしての効果
>元来は映画や演劇などで特に人気の高い俳優を起用することで観客の興味を引こうとする手法のこと。
俳優がキャラに置き換わるだけですね。そのままです。
長所2.説明の省略ができる
>同じ顔の、さらには時として同じ性格のキャラクターが、別の物語では別の人物として登場する。
性格は異なっているが役割が似ている、という場合もあります。24時間テレビ手塚枠アニメにおけるブラックジャックのように。
スピンアウトされた作品ではブラックジャックの時と違い、性格の二面性は影を潜めることが多かったんですが、その役割 – あれこれ指図するちょっと偉い人 – という点では同じなんですね。
特に、読みきりだとか長編アニメなどの単発作品では尺が制限されるので、キャラクターの設定の説明(性格・役割)に使う尺はなるだけ節約したいわけです。
さりとて、
[ ○田×夫 大学生 優柔不断だがいざというときには云々…… ]
というナレーション枠を連発するのはスマートなやり方とは言えません。
で、スターシステムを用いれば、それが一気に片付くんですよ。持ち駒にスターなキャラがあるならば。
アトムと同じ顔をしていれば、真面目な少年だと認識できます。
三蔵(by 吾妻ひでお)と同じ顔をしてれば、変態を極めし者だと認識できるのです。しなさい。できるようになりなさい。
それは、作者が説明の手間を省いてラクをしてるってことか?と言えば、そういう面もあると言えるでしょう。
が、読者としても余計な説明を読まされることなくラクに物語に入っていけるわけです。
スターシステムを用いた設計は、そのキャラクターを知っている読者にとっては、リーダビリティの高い設計と言えます。
長所3.ファンサービスになる
長所1と似ていますが、長所1と異なり有名ではないキャラクターを登場させる場合があります。マイナーなキャラを登場させると、コアなファンが喜ぶからです。
もちろん他にも理由が考えられますが‥‥
- 作者は気に入っているのに人気が出なかったキャラにもう一度チャンスを‥‥いう親バカ心理
- 背景の通行人をたくさん描く際に、めんどうだからつい描きなれたキャラを描いちゃった
- 「○○を出してください。出さなきゃ先生を刺しに行きます」と脅迫状が届いた
など。他にも理由があるかもしれません。
コアなファンの受けを狙うというのはあざとく見えるかもしれませんが、しょせんはマイナーなキャラなので、アンケートを大きく左右するほどの効果は期待できません。
ですからファンは深読みせずに
「サービスしてもらった」
素直に喜んでいいんじゃないでしょうか?と、フォローしておきます。
長所4.物語の鍵を覚えてもらえる
既存の、それも有名なキャラクターが登場すれば、そのシーンは読者にとって印象深いものになります。
ので、終盤まで物語に絡んでこないが忘れてもらっては困る、序盤に伏線を張る箇所で、スターシステムを使うという手もアリでしょう。
短所について
ここからスターシステムの問題点について述べていきます。これだけいいことづくめなのになぜ多くの作家は使わないのか? なぜならデメリットも多いのです。
短所1.スターなキャラでないと客引きにならない
要はそういうことです。
認知度の高いキャラでなければ
「誰それ?ポカーン」
であって、下手すれば
「このキャラを知らない俺(読者)が悪いってのかよ!ムカついた!作者を刺しに行こう!」
となりかねないからです。
短所2.説明の不足が発生しやすい
これもまたキャラの認知度に依存しますが、そのキャラの性格・役割を知っていることを前提として話を作ると、新しい読者にとってハードルの高い作品になってしまうんですね。
スターシステムを用いた設計は、そのキャラクターを知らない読者にとっては、リーダビリティの低い設計と言えます。
当然、まともな編集者であればそういう不親切な物語にOKを出したがらないでしょうから、マンガ家がスターシステムを使いたくても編集サイドでブロックされている、という現実はあるでしょう。
スターシステムに頼って省略しすぎの大ポカをしでかさないために、自衛のためにスターシステムを使わないマンガ家もいるでしょうね。
短所3.ファンサービスは両刃の剣
マイナーなキャラを出してファンサービス……と言ってもそのさじ加減は難しいんではないかと。
あまりにマイナーすぎると、超コアなファン以外
「ポカーン → 刺す」
ですし、ややマイナー、くらいのキャラだとコアなファンが怒って
「ヌルいことやってんじゃねー! → 刺す」
となってしまいます。
いずれにせよ新規の読者にはまったくアピールしないわけですし。
短所4.登場シーンが注目されすぎてしまう
どうでもいいシーンにキャラが立った奴が登場したら、当然ながら業の深いマンガ読みは、そのシーンに何か意味があるのでは?と考えます。しかるに、
- こっそり張ったつもりの伏線がバレバレ
- 伏線でもなんでもないのに、深読みされてしまう。あまつさえそのまま物語が終わると伏線が回収できてない、などと言われる
などといった弊害の発生が考えられます。
まとめ
- 長所
- 本来の意味、すなわち客引きとしての効果
- 説明の省略ができる
- スターシステムを用いた設計は、そのキャラクターを知っている読者にとっては、リーダビリティが高い
- ファンサービスになる
- 物語の鍵を覚えてもらえる
- 短所
- スターなキャラでないと客引きにならない
- 説明の不足が発生しやすい
- スターシステムを用いた設計は、そのキャラクターを知らない読者にとっては、リーダビリティが低い
- ファンサービスは両刃の剣
- 登場シーンが注目されすぎてしまう
ようするに、
「スターなキャラでないと、もしくはコアなファンの多い作家じゃないと使っても効果が薄い。しかも使いこなすにはある程度の技量が必要」
なので、あまり多用はされないのだろうと思います。
スターなキャラを持たない、またはコアなファンの少ない作家が使うべきシステムではないですよね。少なくとも私のような、代原で糊口をしのいでいるような作家が使うシステムでは……
おや‥‥?
えーと、つまりその、アレですよ。創作ってのは魂の発露ですから。
私と云フ現象の記録ですから。
理屈じゃねえんだ!やりたかったらやればいいじゃん!描きたかったら描けばいいじゃん!と。そう思う次第なのであります。
理屈の部分もですね、しょせん長期連載をやったことのない木っ端マンガ家の考えた机上の空論ですからね。間違ってる可能性はかなり大だと思います。ええ。
ツッコミお待ちしております。間違ってるかもしれませんが、刺しにはこないでください。