MOTHER3 プレイ記『鉄の温もり樹々の冴え』(4)
『MOTHER3』
(C)2006 SHIGESATO ITOI/Nintendo
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とむらいの夜が明けて
悪夢のような夜が明けた。本当に悪夢だったらどんなによかったかとフリントはため息をついた。
クラウスとリュカは墓地にいると村の人間に聞いた。フリントは墓地に向かって息子達をなぐさめたかったが、非情なプレイヤーによって、それを阻まれた。
イベントが進む前に行ける場所にはすべて行っておく、プレイヤーの体にしみ付いた悲しい習性だった。
自宅へ戻ると、緊張感をあおるようなBGMが流れていた。昨晩、家族を探しているときに何度も聞いた曲だ。
一夜明けて探索イベントは終了したのだから、ここでこのBGMは変だろうとプレイヤーは思った。
ケアレスミスか。止まり以外の問題点はバグではなく仕様なのか。
ウエスの家。無味乾燥な
「ちかしつへは はいれない」
というメッセージが出て、フリントは地下室に入れなかった。
「アウサケキ峠の進めませんメッセージのようにユーモアが混じっていれば最高だけど、そうでなくともせめて、入れない理由くらいは明示してほしいな。じゃないとストーリーの都合で入れないのがあからさまで、萎《な》えるなぁ」
と、プレイヤー。
そんなにストーリーが大事ならまっすぐ墓地に向かわせろ、とフリントは心の中で憤った。
森を抜けアレックスの小屋まで行き、アレックスの留守を確認して村に戻り、フリントはようやく墓地へ着いた。
墓地には多くの村人達があつまっていた。みんなヒナワが大好きだったのだ。みんなヒナワの死を悲しんでいた。
フリントは村人達にそれぞれ話しかけた。
リッチの言葉はプレイヤーの泣きのツボに突き刺さった。プレイヤーは泣いた。
そして、フリントはヒナワの墓の前に立った。
そこにいるはずのクラウスが、いなかった。
悲劇は連鎖するのか
祖父のアレックスはリュカを問い詰めた。クラウスは母親のかたきをとるため、ドラゴを倒そうとナイフを持って山に向かったらしい。 ドラゴの堅い皮膚を貫けるのは、ドラゴの牙だけだ。
ナイフなどで歯が立つものではない。フリントはブロンソンからドラゴのキバを受け取り、アレックスと共にドラゴの巣へ向かった。
アレックスは、クラウスの行方は友人の使いであるカエルやトカゲが教えてくれると言った。
「カエルがセーブしてくれたり、スズメがアドバイスしてくれたのには理由があったのか!」
とプレイヤーは少し驚いた。
「わたしはトカゲ あなたのゆくべきほうこうを さししめす まわれ わたし!」
と、やじるしトカゲは言ってくるくる回り、フリントの進むべき道を指し示した。
このセリフはなんだかカッコイイので覚えておこう、とプレイヤーは心のメモにしたためた。
カエルやトカゲを使者にできる、アレックスの友人とはマジプシーというらしい。魔ジプシー?と、フリントはいぶかしんだ。
マジプシーは、大昔からこの地の何かを守っていて、不思議な力を持っていて、人でも魔物でもなくて、男でも女でもなくて、年齢もわからない‥‥だけど全員、気立てはいいんだよ、とアレックスは説明した。
プレイヤーは期待した。フライングマン、どせいさんに匹敵するような面白キャラの登場か?と。
マジプシー
http://www.masuseki.com/image/weblog_pict/2006/mother3_015.jpg
いや、〝男でも女でもない〟って、意味が‥‥。
プレイヤーの期待は裏切られた。いい意味で裏切られたのか悪い意味で裏切られたのかは、今後のストーリー次第だな、とプレイヤーは考えた。
とりあえず、笑ってしまったのは事実だった。
ドラゴ
マジプシー達にクラウスの行き先を教えてもらい、襲い掛かってくる〝き〟を倒しながら、フリント一行はドラゴ大地へ向かった。
ドラゴ大地でフリントは見た。昨夜、豚仮面どもが改造カリブーをけしかけてきた場所にあったのと同じ機械を。クラウスの靴で遊ぶドラゴの赤ん坊を。そして、改造カリブー同様に、サイボーグ化されてしまったドラゴの姿を。
フリント達はなんとかドラゴを倒した。しかし、クラウスを見つけることはとうとう出来なかった。
MOTHER2でもあった、メタ視点的メッセージが流れ、一章が終わった。
ドロボウ術を持つ男
2章「泥棒アドベンチャー」は、1章でフリントが崖を登るのを助けたドロボウ術を持つ男・ダスターが主人公だった。
平和なタツマイリ村で、必要の無いドロボウ術を父親から叩き込まれたダスター。
ダスターの父親、ウエスは言った。
「わしが おしえたことを こころみるときが とうとう きてしまった」
この老人は何を知っているというのか。
プレイヤーはいぶかしんだ。
「そもそも、恐竜と共存している19世紀アメリカ西部的この世界がおかしい。ときが来た‥‥ということは、ウエスは豚仮面たちと豚仮面の親玉について‥‥つまり、この世界とは違う別の世界について何か知っているのか?この世界はパラレルなのか?パッと見て19世紀的なのにお金も銃も無い、いびつなこの世界。パラレルどころか、仮想現実という展開も在り得るのか?」
考えても答えはでないので、プレイヤーはダスターを操作して、目的地のオソヘ城へ向かう前に、いつものように他に行ける場所は無いか、くまなく歩き回った。プレイヤーの体にしみ付いた、悲しい性だった。
フリントの家に行くと、深夜にもかかわらずリュカが家の外で愛犬ボニーに寄り添っていた。
リュカの母親は、もうこの世にいない。兄はドラゴを倒しに行くという無謀に出て、行方が知れない。父と祖父も兄を探しに行ったまま、戻ってきていない。
人一倍、甘えん坊で怖がりなリュカは、今そばにいるたった一人の家族であるボニーにすがらずにはいられなかったのだろう。
いたたまれない気持ちになりながら、プレイヤーはその日のプレイを終えた。
– 続く –
P.S.
今からプレイを始める人もいると思うんで、 重要なシーンほど意図的に淡白に書いてます。 ドラゴを倒すくだりとか。
ダスターに付けた名前は「ジャポ」。ジャポニズムから。
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追記:2020-02-05
この小説風プレイ日記はここで中断し、以降は書かれておりません
書かなかった理由は、私にとってMOTHER3は期待ほどのゲームではなかったからです。
無責任ではございますが、これ以上、書く気にならなかった理由、個人的なMOTHER3のいい点、悪い点を述べて幕とします。
- よかったところ
- プレイヤーの代弁者としてのクマトラ姫の造形
- 「第3章 あやしい行商人」は最初から最後まで良かった
- やじるしトカゲ
- わるかったところ
- クラウスが救われない
- 難易度調整がいまいち
- 難易度もそうだけど、基本的にプレイヤーを信頼していないと感じました。侮って、不要に親切が過ぎていたんですね。ヒマワリがヒナワの好きな花であることは、真面目にプレイしていればわかってること。それを重要イベントシーンで、わざわざメッセージで説明されたので一気に興ざめしました
- また、その同じ重要イベントシーン。霊的なオカルト的な理由で主人公が助かったのだと説明してしまう演出にも閉口しました。「たまたま運よく助かる→プレイヤーはヒマワリを見る。単なる偶然ならざるものをプレイヤーは感じる」で良かったように思えます。暗喩を用いず、すべて説明する。これは結局、プレイヤーへの信頼が無いからに他なりません。つまりは、バカにされているように感じたのです。
- マップがおおむね斜投影ではない(一部は斜投影だったが)。これつまり、グラフィッカーがMOTHERのMOTHERたる部分を否定したも同然で、それはシリーズのファンを否定したも同然なのですよ。絶許。
- 全体に、音楽があまり印象に残りませんでした。これは1周しかしてないせいもあるでしょうが。ただこれは、ネタ元がなくなったというのもあるんじゃないかと思います。プレイ記(3)で書いたように、MOTHERとMOTHER2はイケイケだった USA 文化がバックボーンなんですよ。カモンベイベーアメリカン。’70~’80年代の名曲を匂わすような曲が多いのです(特にMOTHER2)。MOTHER3が’90年代をネタ元にしてれば面白かったのでしょうが、そうはなりませんでした。どうも糸井氏が’90年代を評価してないんじゃないかと疑ってます。推測はともかく、MOTHER3の音楽は「悪くないが、すごく良くはない」にとどまりました。
悪かった点の中で最悪なのは、クラウスが救われない所です。
「双子が主人公の物語は、どちらかが死ぬの法則」
と通りになってしまいました。ザ・凡庸。
ラストをメタっぽい演出で〆ちゃうのも、それは飛び道具で合って、MOTHER2で使ったでしょ、連発はあかんよ……と思いました。
クラウスが救われて、上手にカタルシスをまとめていたら、途中の問題点はさておき、もっと高評価だったと思います。長い物語は、オチが重要。
以上です。