板橋区の常盤台には意図的に作られた袋小路(クルドサック)がある
板橋区常盤台。ここは東武鉄道が沿線を開発するにあたって、田園調布をお手本にして、そりゃもう力を入れて開発したので板橋区の中ではいちばん地価も高い。
田園調布をお手本にして(さらにはお手本のお手本であるヨーロッパを意識して)放射状の道路と環状のプロムナードがあったりする。
そして、クルドサックと呼ばれる袋小路も数箇所、意図的に作られた。
その計画はどうも中途半端なところで終わってしまったようなのだけど、いまもってその痕跡は常盤台のあちこちに残っており、お散歩系ブロガーの格好のネタであり、私もこうしてエントリを上げる次第である。
すでに先達がたくさんいて、検索すれば十分に情報が得られるからといって、私が遠慮する必要はない。さっそく歩いてみよう。
プロムナードとロードサック
これがそのプロムナードだ。はじめて常盤台に来たときは、なにかオシャレな道があるな~と思ったもんだが、じっさいに通ってみると、ずーっとカーブが続く道で、すぐに自分がいまどっちの方角に進んでいるかわからなくなる、私のような方向オンチを殺す道だと思った。
環状道路は、ずっと一方向に歩いてりゃ、いつかはスタート地点に戻る、ある意味では方向音痴を助ける道なのだが、常盤台の環状道路は完全に閉じてないので円環の理に導かれてスタート地点に戻ることは難しいのである。
このプロムナードにはロードベイなるものも設けられていたらしい。
あまり調べずに来たら、この公園がロード・ベイなのか、公園周辺の道路がかつてのロード・ベイなのかわからなかった。
帰宅して調べたところ、このなんの変哲もない公園がかつてのロード・ベイだった。
最初に訪れたクルドサック
このエントリの冒頭のパノラマ写真のクルドサックだ。常盤台に全部で5つ残ってるクルドサックの中で、ここがいちばん小さい(行くまでは、大きさに違いがあるとは思ってなかった)
どうせなら上から眺めたかったが、まさか見知らぬ民家の居住者に
「写真を撮りたいのでベランダに上がらせてください!」
と頼むわけにもいかない。いや、プロの写真家ならそれをやっちゃうのかな?
クルドサック。クルド人の袋(サック)に似ているから、そう呼ばれている……ウソである。そうだったら面白いな、とは思ったが。
正しくはフランス語で cul de sac だ。sac は袋で合っている。リュックサックのサックだ。de は助詞で「~の」。
問題は「cul」だ。
エキサイト翻訳を使うと、cul de sac は「袋小路」。”cul”を翻訳すると「単純な」となる。
しかし、それで
「ははあ、出入り口の一つしかない(単純な)袋という意味だな……」
と早合点してはいけないようだ。
念のため、オンラインのフランス語辞典を引いてみたら、出るわ出るわ 「尻」「尻の穴」「肛門」「けつ」「アヌス」「肛門性交」「痴人」……といった意味が並んでいたのだ。
つまり、クルドサックとは直訳すれば「袋のケツ」であって、どうもあまり板橋の田園調布にふさわしい、お上品な言葉じゃないらしい。
クルドサック – Wikipedia から Wikipedia(仏)に飛ぶと、項目名は Impasse ― Wikipe’dia であって、cul-de-sac は通称扱いなのである。
日本語でいちばんニュアンスの近い言葉は「どんづまり」だろうか。 オシャレな言葉だと思って米国人が使い、その影響で日本人もクルドサックと呼んだのだろう。
しかし、cul に尻の意味があるのだとすると、当のフランスでの使われ方は
「ちくしょう!クルドサック(行き止まり)じゃねーか!」
などという汚い言葉だったように思えてならない。
もしかすると、クルドサックを上から眺めた図、中央の円の部分を肛門に見立てて、そこから出た言葉なのかもしれない。
もちろん、筆者にフランスおよびフランス語の知識はないので、徹頭徹尾ただの勘違いという可能性もあることは、ご留意いただきたい。