※ このエントリは2008年に書かれたものです。
> 貸与権管理センター監事ちばてつや氏の貸与権についての無知 – Copy & Copyright Diary
http://d.hatena.ne.jp/copyright/20080521/p1
> その貸与権管理センターの監事であるちばてつや氏が貸与権について次のように説明されています。
> ああ、「貸与権」というのは、簡単に言うと本を貸す時の権利、そう、今、東京や大都市の町のあちこちにあるレンタルコミックやマンガ喫茶、図書館などで貸し借りされている書籍の著作権の事。 現在はまだいろいろ問題があるので、センターを中心に、レンタル店、出版社、流通、それに、小説家、マンガ家、写真家などが話し合いをしている最中なんだよ。
> (強調:引用者)
> 何度も指摘してきていますが、通常、マンガ喫茶では著作権法における「貸与」はなされていません、つまりマンガ喫茶には「貸与権」は及びません。
> マンガ喫茶で行われているのは、その場でマンガを読ませる行為、閲覧であり、展示に過ぎません。
> 店内での貸出は「貸与」には該当しません。
> そのことは、マンガ家はよく知っているはず。
これ、ちば先生が書いてらっるのは貸与権とはなにか?という説明ですよね。
> 簡単に言うと本を貸す時の権利
の説明。
マンガ喫茶や図書館にも著者の権利が及ぶ!貸与料を徴収せねば!なんて主張は、一言も書いてないですよね。
> そのことは、マンガ家はよく知っているはず
。
それは買いかぶりすぎです。
総会に出席する人は色々います。出版社の人やマンガ家になったばかりの人。
全員が著作権にくわしいわけではありません。
そういう場ですから、公貸権とは何か?図書館からはなぜ貸与料を徴収できないのかについて説明しますし、
マンガ喫茶や図書館からなぜ貸与料を徴収できないのか、
マンガ喫茶の営業形態は頒布や上映に当たらないのか、一時的な貸与だと言える可能性はないのか、
マンガ喫茶側と協議することで徴収できるようになる可能性はないか、
そういった諸々のことについて話し合います。
>「貸与権」というのは、簡単に言うと本を貸す時の権利、そう、今、東京や大都市の町のあちこちにあるレンタルコミックやマンガ喫茶、図書館などで貸し借りされている書籍の著作権の事。現在はまだいろいろ問題があるので、センターを中心に、レンタル店、出版社、流通、それに、小説家、マンガ家、写真家などが話し合いをしている最中なんだよ。
言葉足らずだとは思いますが、貸与権とは何かを貸与権を知らない人に説明するとして、上の文章は何も間違ったこと言っていません 公貸権とは何か? マンガ喫茶はなぜ貸与にならないのか? を含めて、本を貸す権利についての説明なのです。
〝及ばない〟と〝無関係〟はちがいます。〝及ばない〟も〝本を貸す時の権利についての話し合い〟の一部です。
繰り返しますが、ちば先生はマンガ喫茶、図書館から貸与料を徴収できる(または、するべきだ)とは一言も書いていませんよ。
ついでながら、たぶんオフレコじゃないはずなので書きます(前回までの総会にはマスコミの記者も来てましたから。私は今回は出席してないのでわかりませんが)
前回の総会での報告によりと、貸与権管理センターとJCCA-日本複合カフェ協会の間で、 現在、マンガ喫茶から著作者へ何らかの形で還元する道がないかを模索し、協議中とのことでした。
それが法的にどういう名目になるかはわかりませんが、マンガ喫茶側もコンテンツ生産者になんらかの形で還元はあるべきだと考えていますし、貸与権管理センターもかつての ACCS が中古ソフト販売店に対して行ったように、
強硬に頒布権を主張して法廷闘争しか道が無くなる……という過ちをおかそうとはしていません。(もっとも、交渉が決裂しているかもしれません。もう一度言いますが、私は今年の総会に出席しなかったので、まだ知らないのです)
> 最初、マンガ家達が書籍・雑誌への貸与権適用を要望した際には、貸与権でマンガ喫茶を規制できると思っていた。しかし、貸与権ではマンガ喫茶を規制できないことに気付き、当時まだ店舗数が少なかったが、一部のレンタルCD・DVD店がはじめたコミックレンタルをターゲットに切り替えて、無理矢理法改正を迫ったという経緯がある。
これ、ウィキペディアの記述(出版物貸与権管理センター – Wikipedia)も同様ですけど、ソースはあるのでしょうか?
21世紀のコミック作家の著作権を考える会の過去のアピール文を読んでも、最初は貸与権に言及していません。
アピール文で貸与権を求めるようになったのは発足から3年後の第4弾からです。第4弾のアピール文にはマンガ喫茶のことは言及されていません。
ですから、
> 最初、マンガ家達が書籍・雑誌への貸与権適用を要望した際には、貸与権でマンガ喫茶を規制できると思っていた。
というのは誤りです。
そもそも21世紀のコミック作家の著作権を考える会は理事や会員は漫画家だけれども、運営してるのは法律事務所(アピール文第一弾の最下段参照)なので、
> 貸与権でマンガ喫茶を規制できると思っていた
なんて初歩的な間違いをするわけないんですね。
それに、> 一部のレンタルCD・DVD店がはじめたコミックレンタルをターゲットに切り替えて
なんていう、漫画家たちがどこをターゲットと考えてるか?という話は、21世紀の~会の総会に出席した人間以外、知りようがないはず。憶測すぎます。
私は末端とはいえ前回の総会に参加した人間なんで書きますが、上の情報は間違っています。
一部に足並みの揃わない人はいますが、基本方針として21世紀の~会と貸与権管理センターは、レンタルコミック事業の成功と拡大を切に願っています。
貸与権管理センターは特に。なんといってもレンタルコミック事業は貸与権管理センターの(現在のところ)唯一の収入源ですから。
だから、まずはレンタルコミック店が儲かってもらわないと困るし、
> ターゲットにする
などという敵対関係にはないのです。
成功してもらわなきゃ困るから、法改正後、法を盾に強制徴収せずに粘り強く2年間交渉して、CDVJ と徴収料について合意を結んだんですよ。
CDVJ 側が合意せずに文化庁へ訴えたら国会へ差し戻し著作権法改正の再審理となる可能性もあったと聞きます。文化庁は一方的に作家側をえこひいきして法改正したわけではないのです(ただし、これは私が21世紀のコミック作家の会総会で聞いた話なので、ネット上にソースはありません)。
ですから、お互いに譲歩した上での合意なのです。しかし、世間一般には( id:copyright 氏には?)無理矢理と見られてるんですね。
それはまあ、サイトを持っていながらプレスリリースもほとんど出さないうえにパブコメ募集もしない21世紀の~会と貸与権管理センターの自業自得と思いますが。
> 当時まだ店舗数が少なかったが、一部のレンタルCD・DVD店がはじめたコミックレンタルをターゲットに切り替えて、無理矢理法改正を迫ったという経緯がある
当時というのは法改正前年のことでしょうか。法改正が必要かどうかを判断するためのデータをとるために、一部のレンタルCD・DVD店でコミックレンタルの実験を始めたのです。
具体的には↓こちら。
>文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第6回)議事要旨-資料2-3:レンタル実験店報告書
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/03121001/003.htm
したがって、当時というのが法改正前年を指しているのだとすれば順序が逆であり、無理矢理法改正を迫った
というのは事実誤認です。
まさか id:copyright 氏がこのような事実誤認をしているとは思いませんでした。
それ以前から街の貸し本屋は存在していました。しかし、出版業界に大きな影響を与えるような大手レンタルCD・DVDチェーン店は法改正以前にはコミックレンタルをやっていません。実験店を除いては。
個人的蛇足
なんか、おもいっきり擁護しちゃいましたけど、個人的には 21世紀の~会と貸与権管理センターの動向を全面的に支持してるわけじゃないです。いまさら遅いかな。
私くらいの知名度だと貸与権を行使しても何もおいしくないですからね(そもそも貸与契約の話自体が来ない、というのはおいといて)
だいたい貸与権管理センターって、あれ、どうみても狙いは出版界のJASRA…ぅゎなにをすくぁwせdrftgyふじこlp;
(つーか、4年前くらいの総会で理事達にちょっとした質問をしたのをいまだにからかわれるんだよな、
「○○○○に楯突いた男」
とかなんとか。楯突いてないってば!やめろーっ、私の業界での居場所を無くすような噂をひろめるなーっ!)
だからといって間違った情報や憶測で糾弾されてるのを見るのはしのびない。なぜだか知らないが情報を出したがらない21世紀の~会、貸与権管理センターの自業自得だとしても。
漫画家には、読者と出版社と流通と小売店が必要なんですよ。それでごはんを食べてるんです。
出版社には、読者と漫画家と流通と小売店が必要なんですよ。それでごはんを食べているんです。
需要と供給はひとつの円環運動なのです。
だれかが自分の都合しか考えなくなると、 そこで止まってしまうのです。
読みたい要求に応えてあげたくとも、私たち生産者の経済力が足りなくなるのです。 バターが無くなってから文句を言われても困るんです。
最初に戻って
正直に言えば、貸与権問題に関してなぜ作家はだまっているのかと多くの読者はいぶかしんでいるのだと思う。
私だって読者と出版社と私がみんなちょっとずつ幸せになり、ちょっとづつ譲歩する win-win の関係になるのが理想だと思うし、そのために(21世紀の~会、貸与権管理センターがプレスリリースを出さないのなら)言える範囲で、自分のブログに書こうかなと考えるときもある。
そう考えてる作家さんはほかにも多いはず。
読者あっての作家なんですよ。お金のことしか考えてないような作家はほとんどいないんですよ。それは理事の人たちも同じ。(そうは見えないかもしれませんが、あの人たちは〝漫画家の収入を守る=読者の利益につながる〟という信念に基づいて行動しているのです)
だから、声をあげたいときもある。泡沫マンガ家としての本音を言いたいときもある。
でも、今回のように言葉尻をとらえてあげつらっているのを見るとね。
ビビッて貝になっちゃいますよ。ほとんどの漫画家は。
たいがいの漫画家は内向的で、対話や議論が得意な人間じゃないんです。私もそうですよ。だから、自分ひとりで構築できる世界(物語作り)に向かうのです。おっと脱線&偏見。
私は、Copy & Copyright Diaryを長年、購読してて、いつも著作権について勉強させてもらっているだけに、今回の脊髄反射のようなエントリは非常に残念でした。
こういう糾弾ばかりが続けば、いつまでたっても漫画家は炎上を恐れて口を開こうとしないでしょう。当事者からの意見が出てこないのは、id:copyright 氏にとっても望まないところなんじゃないですか?
北風が強く吹けば吹くほど、コートと旅人は一心同体になります。
さらに蛇足
はてブのコメントで、ちば先生が老害っぽく言われてますが、私はまったくそうは思わないですね(私がちば賞の佳作を受賞してるからじゃないですよ)。
「松文館事件」での意見を求められたときのこの証言↓
松文館事件控訴審:ちばてつや証人が証言 – kitanoのアレ
なんて、この訴訟の問題点と戦後の日本が何を大事にしてきたかを的確に指摘し、自分の経験とネームバリューを活かした非の打ち所のない証言ですよ。残念ながら裁判は有罪が確定してしまいましたが。
そのほか、近年のさまざまな漫画家の表現をめぐる問題で、大筋において、ちば先生は表現の自由を守るべきという立ち位置でコメントをしているのを忘れないでほしい。
どう考えても、ちば先生は表現の自由を守りたい側の、きわめて有能な味方であって、そこを見誤って言葉尻をとらえて攻撃して、有能な味方を失うようなことはやめましょうよ、と。私はそう思うのです。
ちょっと、おちつけ、と。
> ボクは少しボケているので
だなんて、ちば先生は書かれてますが、またまたご謙遜を、ですよ。
ちば先生のようなクレバーな方が貸与権の問題に無知なんてありえないんです。
しかし、『ぐずてつ日記』の読者には貸与権について、よく知らない人が多いでしょう。貸与権を知らない人に貸与権とマンガ家の関係を150字程度で説明するとあんなもんですよ。むしろ簡潔さに感嘆するくらい。私なんて、ホラ、あっという間に蛇足蛇足でこの長文だ。
『ぐずてつ日記』は、著作権に詳しい人に向けて著作権について長々と論理立てて語るような場所じゃないことぐらい、見ればわかるじゃないですか。
だからこそ正しい書き方が必要だというのはもっともだけど、煽るような書き方でなく書かれた場を考慮した控えめな指摘の仕方ってできませんか?
最後に私の好きな言葉を引用。
>カラテカで最初構えないと即死するじゃん。それと一緒。構えてない人をいきなり襲うな
2006-11-30 – kyoumoe dovrebbero funzionare per vedere CLANNAD.