『everybadyeverything(エヴリバディーエヴリシング)』
- 著者:ウィスット・ポンニミット 訳者:ワチラポーン リムビプーワッド, 木村 和博
- 税込価格 : ¥1,365 (本体 : ¥1,300)
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- 『everybadyeverything(エヴリバディーエヴリシング)』
- 著者:ウィスット・ポンニミット
- 発行:マガジン・ファイブ
- 発売:星雲社
- 解説:よしもとばなな
- 『hesheit(ヒー シー イット)』
- 著者:ウィスット・ポンニミット
- 出版:beboydcg
なんかアンテナが反応したので
ネットの書評をいくつか読んで、ちょっと目を通しておくべきマンガのような気がしたので、 買ってみました。ともに池袋ジュンク堂にて購入。 『hesheit(ヒー シー イット)』の方はISBNも奥付けも無かったので、 たぶん同人誌的に発行したものだと思う。
どちらもタイ人のマンガ家、ウィスット・ポンニミット氏による短編集。 正直、玉石混合でした。 いくつかの部分では心に響くものがあったけど、 陳腐すぎて失笑してしまう部分もいくつか。
表紙の左の子は、つるっぱげの男の子ではなく、
女の子だったんですね。
(C)Wisut Ponnimit
なんで、表紙の背景を黒にしちゃうかな。
『everybadyeverything』の方は、 こういう女の子と子犬の触れ合いのような心温まる系の話が中心で、 完成度も高い作品が揃っている感じ。 『hesheit』はもっとバラエティに富んでいて、 どうしようもないギャグマンガや実験マンガなど、 著者の若気の至りが詰まっていました。
で、全体を通して言えることなんですが、ものすごく雑なんですよ。絵が。 『everybadyeverything』ではだいぶマシになっているんですけど、 『hesheit』はもう本当にひどい。 失敗した部分に修正を当ててないですし。 ワク線は定規を使ってないしベタはきちんと塗りつぶしていない。
そういう、丁寧に描かないこと・勢いを優先させることが著者の武器であるとも思えないんですよね。 『hesheit』よりは丁寧に描いている『everybadyeverything』の方が、 マンガとしても完成度は高まっているわけで。
「絵が雑だからといって、内容まで低く見てしまわないよう注意しないと」
「でも、雑な絵を著者の味だと思わず肯定しないよう気をつけよう」
などと考えながら読み進めました。
心に残った作品『everybadyeverything』編
「ゲーム」
まぁ、必死におこづかいを溜めてファミコンのゲームを買ってた少年が大人になって…… てな話を描かれてはね。負けです僕の負け。さあ殺せ。ラストも秀逸。
「お兄ちゃん」
無愛想な兄が留学して海外に行った。6年後、兄の留学先へ行き、再会した。 それだけの話。それだけなのに、ぐいぐい読ませるこの筆力の凄さはなにごとか。 最も読み応えのある部分を物語のど真ん中に持ってくる異様さ。 起承転承結?。
ラストは残念ながら陳腐きわまりなく思えました。
心に残った作品『hesheit』編
「すいか」
「もしへんなかっこうですいか切っても中身がまだすいかなのか俺は知りたいんだ」
変な疑問の提示で始まり、突拍子もないオチで終わる。 作者はこれをギャグのつもりで描いたのかどうか。 マンガの結末も怖いが、作者が何を考えて描いたのかわからないのがもっと怖い。
「彗星」
「私は彗星 宇宙をグルグル旅しているの」
彗星は実は女の子(しかもカワイイ)だった! そんな彗星に一目ぼれした少年。 しかし会話できたのは一瞬だった(相手は彗星だから)。
再び会えるのは十年後。 しかしちょっとした事故から彼女の軌道が地球を直撃するコースに変わってしまって……
救いがあるような無いような結末の、不思議なファンタジー。
『hesheit』の方は、 物事に対する視点を変えてみる、 というテーマをグロ表現や汚物ネタで展開した作品が多く、 出来が悪いわけじゃないけど未熟というか直球すぎる印象は否めないですね。
↑こちらは、著者が自作を映像化したアニメーションだそうです。