お墓参りと観光に鹿児島へ行ってきた
2008 年のお墓参りは諸般の事情で消化不良に終わったので、毎年、ちゃんとやり直したいね……と杉作さんと二人で言ってた。
で、今年。二人ともなんとか都合がつきそうで、この機を逃したら次いついけるかわからないので、あらためて鹿児島に行くことにした。
すると、杉作さんのご長男(6歳。以下ジュニアと記す)が、
「どうしても飛行機に乗りたい」
とおっしゃるので、連れて行くことになった。
ツー・メン・アンド・チャイルドである。映画っぽいのである(?)
というわけで、以下は川畑さんのお墓参りと鹿児島観光の話です。ひとり旅じゃないので、あんまり写真は撮ってないです。
搭乗予定の飛行機が 10 分遅れているとアナウンスがあったので、余裕かまして屋上デッキなんぞに寄り道したら、
あやうく乗り遅れかけた。
それというのも、杉作さんがゲートでひっかかったからだ。 鹿児島で仕事をするつもりだった杉作さんは筆入れにカッターを入れていたのだった。
前日、私が高校生のとき、美大受験でウェストポーチにはさみとカッターを入れてたのでひっかかった話をしたのに……。まあ、急いでると人間そういうもんですわ。
職員さんも最初は
「あんたなにカッター持ち込もうとしてんの?時間も時間だし、こりゃもう搭乗あきらめてね」
みたいな態度だったらしい。そこをなんとかカッター没収だけで、搭乗に間に合うよう残りのチェックを大急ぎでやってもらえたのは、不安げにみつめるジュニアがいたからだろう。今回の旅の最大の功労者だ。
最後は走って、ようやく ANA 621 便へ。
さすがは鹿児島行き ANA 。私が帰省のとき使う宮崎行きのソラシドの機体より座席数が多かった。
通信しない電子機器の使用が認められるようになったので、人生初離陸体験のジュニアの様子を動画で撮ればよかったな~とあとから思ったけど、そのときはそこまで考えが回らなかった。
飛行機を心から楽しみにしていたジュニアは雲しか見えなくなると、ジバニャンやポケモンのおもちゃに夢中になったのだった。まあ、そんなもんだ。
シートベルトをした6歳児の目線の高さだと、飛行機の窓の位置は高すぎて外がよく見えないようだった。 気を利かせて窓際の席を予約してあげたのは失敗だったか。
鹿児島到着
空港でレンタカーを借りようと日産レンタカーやオリックスレンタカーの並んでるところに向かったら、予約したトヨタレンタカーが見当たらない。電話したら、空港から送迎バスで向かうのだと。やられた。
そして杉作さんの希望で予約したプリウスに乗車。ちなみに私は免許を持ってないので全部運転してもらった。もうしわけない。
(飛行機・ホテル・レンタカーの予約・食事処ピックアップ・杉作さんが仕事中のジュニアの相手は私がやったので、チャラなのです。いちおう……(だいぶ杉作さんの好意に甘えてしまった気がするけど))
まずは腹ごしらえ。そのピックアップしたリストの中から回転ずし『めっけもん』をチョイスした。
めっけもん ドルフィンポート店 – 朝日通/回転寿司 [食べログ]
http://tabelog.com/kagoshima/A4601/A460101/46001235/
あとで川畑さんのご家族と雑談したとき、
「鹿児島市の回転寿司ならあそこが一番うまいね」
とおっしゃってた。地元民が言うくらいだから良いチョイスをしたと思う。
ただまあ、「甘口醤油」と「めっけもん醤油」があって、「めっけもん醤油」が砂糖抜きの醤油かどうかわからなかったので、
「すみませーん、甘くない醤油ありますか?」
と言ってわざわざ出してもらったけど。
郷に入りては郷に従えと言うけれども、こればっかりは……。宮崎県人だけど、南九州人だけど、私は寿司は普通のしょうゆで食べたいんですよう。
ただ、それでも礼儀上(?)一貫だけは甘い醤油で食べた。
この記事、旅行記なのに写真がぜんぜんないですけど、杉作さんとジュニアの顔の写ってる個人情報満載な写真が多いからです。ご了承ください。
遺影
前回のお墓参りでお線香をあげることができたかどうかは忘れてしまった(あげられなかったように思う)。 花を供えたり、草むしりしたり、お墓を洗ったりしなかったのは確かだ。
飛行機にライター等は持ち込めないから、現地で買えばいいやと思っていたけど、迷ったりなんやかんやで時間が足りなくなってしまった。年の瀬も近い週末。鹿児島中央駅ビルの駐車場をぐるぐる回らされた。
結局、花は買えずコンビニでお線香だけ買って菩提寺へ。
前回は鹿児島へ行った当日に川畑さんのご家族へ電話をしてしまい、ちょっと常識がなかったと反省したので、今回はあらかじめ杉作さんに電話してもらっていた。
川畑さんのお墓はつい一ヶ月前に菩提寺の納骨堂へ移されてたとのこと。事前に電話してなかったら
「もう場所わかってるし、ストビューでブクマしてるしスマホもあるし迷わな……お墓が消えてるー !?」
てなるところだった。あぶなかった。
そして、納骨堂なのでお花も供えられないのだとのこと。お花が買えなくても結果オーライになった。
遺影の写真は、私はあまり見たことのない、メガネをかけた川畑さんだった。
杉作さんが感慨深げに、
「MANGA OPEN受賞のときの写真だ」
と言った。
合掌。黙祷。ジュニアは騒ぎもせずダダもこねず、本当におりこうさんだった。
2008 年のときと同じく、缶コーヒーが供えられていた。コーラもあった。コーラ好きだということは生前本人から聞いたことがあったように思う。忘れてたけど。
缶コーヒーとコーラは地元の友人が備えたものだろう。そうしたくなる、人を惹きつける一種のカリスマ性が川畑さんにはあった。それはもう、思い出ばなしを忘れないように記事にしたり、あまつさえ鹿児島に何度も足を運んでしまうほどに。
聖地巡礼
いったんご家族と別れ、ホテルへ。が、ホテルへ行く前にすぐ近くのなので、『S60チルドレン』の舞台である竹小学校のモデル、鹿児島市立武小学校へ行こうと提案した。
途中、ジュニアが真っ先に桜島の噴煙に気がついた。子供は注意力がすごい。
これでもう、鹿児島旅行で見るべきものの最重要案件はクリアしたようなもんだ。
そして武小到着。正門が開いていた。部外者が入っていいものかどうか悩む。怪しい大人(しかも写真を撮ってる)はすぐ通報されかねない昨今だ。
私は外から校舎を撮れればそれでいいと思い、びびって
「やっぱ(入るのは)やめましょう」
と言ったのだけど、杉作さんが
「せがれがいるから大丈夫じゃない?」
と言い、それもそうだということで中へ入った。
S60チルドレン(1)
講談社 (2013-10-21)
Amazon.co.jpで詳細を見る
さすがに屋上には上がれなかった。建物の高さから考えて、『S60チルドレン』冒頭の”校舎の屋上から鹿児島市を俯瞰して向こうに桜島”という構図は、実際には武小ではなく丘の上の武中学校の屋上からの景色ではないかと思った。
一日目の夜
ホテル到着。ちょっと古いホテルなのだけど、大浴場があるというだけの理由でビジネスホテルではなくホテル鴨池プラザにした。
ホテル鴨池プラザ 口コミ・価格比較・予約 – トリップアドバイザー
http://www.tripadvisor.jp/Hotel_Review-g298211-d1083484-Reviews-Hotel_Kamoike_Plaza-Kagoshima_Kagoshima_Prefecture_Kyushu_Okinawa.html
到着するやいなや、ジュニアが
「え?ここ……?ちっさ……」
「想像してたのとちがう……」
と。子供は正直だ。
実際、だいぶ年季が入った建物だった。駐車場は出入りしにくく、部屋の照明は暗かったし、大浴場もぶっちゃけると中浴場くらい。でもまあ他にだれもいなければ家族4人くらいは湯船に入れるので、やっぱりビジネスホテルにしなくて正解だったと思う。あんまり期待してなかった朝食は家庭料理っぽいバイキングで意外に良かった。
私はジュニアを
「今日見たものを描いたらお母さんよろこぶよ」
などとそそのかして、絵を描かせた。
ジュニアが描いたのは噴煙を上げる桜島だった。
さすがに上手だったのだけど、一枚しか描かなかったので、
本人はあんまり絵を描くのは好きじゃないのかもしれないと思った。
夕食は川畑さんのご家族に
「せっかくだから夕飯ご一緒にどうですか」
と誘われたので、せっかくなのでご好意に甘えさせていただいた。……ら。
ちょっとリッチな晩ご飯をご馳走になるくらいなら、ご好意に甘えてもいいだろうと思ったのだけど、 身に余るディナーに連れていただいて恐縮するやら恐縮するやら。
素晴らしい夜景と料理とともに、故人の話をたくさん聞かせていただいた。意外な一面も、納得の一面も。
小さな子がいるので酔っ払いすぎないよう注意して、タクシーでホテル鴨池プラザに戻った。
大人ばかりが楽しげにおしゃべりしてるなか、ジュニアはほんとお行儀よくしててくれた。 なんかベタぼめだけど、とても小学校に上がる前とは思えないほど手がかからない子だった。
ホテルへ戻って、深夜2時くらいまで杉作さんは下描き作業。布団で寝るのは久々だと言っていた。 心配なことだ。
20 代の人間だって過労が続くと死ぬことがある。30 代までなら無理も効くかもしれないが、40 代はそうはいかない。
二日目
昨日の天気予報は変更されることなく、朝のニュースは午前中には雨が降り出すと告げていた。
鹿児島観光にあたって、”鹿児島に来たなら外せないもの”は、桜島だろうと思う。
子供が喜ぶ水族館も、鹿児島じゃなきゃってものではないし。平川動物園は『S60チルドレン』的には聖地巡礼になるけれども。
聖地巡礼と言えば、『S60チルドレン』二巻の P225 の6コマ目、ラフに描いてあるけど、 これは鹿児島市の甲突川にかかってた有名な五石橋のひとつだと思う。
甲突川五石橋 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B2%E7%AA%81%E5%B7%9D%E4%BA%94%E7%9F%B3%E6%A9%8B
五石橋は 1993 年の鹿児島大水害でふたつが流されてしまい、残る三橋は石橋記念公園に移築された。江戸時代末期の建築だから聖地巡礼を抜きにしても見たい気持ちはあったけど、川畑さんの母校が武小学校であることを考えると、マンガに描かれたのは流されて現存しない武之橋である可能性が高いし。
私以外、杉作さんもジュニアも楽しめないと思ったので最初から予定に組み込まなかった。
旧鹿児島刑務所跡とか、猫の糞小路とかも見たかったけど、まあ、これはいつかね。
上野のとは違う軍服姿の西郷さんを杉作さん親子に見せたかったけど、雨がパラついてきたので焦って忘れた。
まあ、一日目に車の中からクラーク像大久保利通像を見たからよしとしよう。
桜島
桜島のフェリーで食べるうどんが鹿児島でいちばん美味しいうどんだという評判です!と杉作さんにすすめたけど、 自分は糖質の摂り過ぎに注意しなきゃならんので食べなかった。
フェリーのうどんが美味いのはキャンプのカレーが美味いのと同じ理屈で、フェリーに乗るというちょっとしたワクワク感でプラス補正されてるだけだと思う。ごく普通の立ち食いうどん(鹿児島らしくやや甘めのつゆ)だよ、あれ。
奇岩萌え、奇勝萌えなら見ておきたい桜島マグマ奇岩群。いたるところに屹立するかつてのマグマ。
まー、私は子供のころ”桜島溶岩道路”という名前に赤く流れる溶岩を間近で見られると思ってすごくワクワクしてたのに、いざ来てみたら冷えた黒い岩があるだけだったのでものすごくガッカリしたのだけど。
このあと桜島溶岩なぎさ公園で足湯を楽しんだ。
桜島溶岩なぎさ公園&足湯 – みんなの桜島
http://www.sakurajima.gr.jp/tourism/000677.html
桜島のマグマのおかげで、鹿児島市の銭湯はほとんどが天然温泉らしいのだけど、ホテルに大浴場があったし、行かなかった。 子供は温泉なんかうれしくないだろうと思ったし。
ところが公園の足湯には観光客とは思えない小学生女児二人(親が見えなかった)が仲良く足湯を楽しんでいた。 そうか。子供も温泉が好きか。固定観念はいかんね。そういや私も指宿の砂風呂が好きだったっけな。
道の駅と間違えて迷い込んだ桜島レストハウスには猫が5~6匹たむろってた。
大量にあるエサのカリカリに目もくれず野鳥を襲う薩摩隼人な斑猫。
野鳥を捕らえた斑猫は我々に気をとられてアゴの力をゆるめてしまい、まだ死んでなかった野鳥を逃がしてしまった。
それを捕まえ漁夫の利を得たのがこいつ。
桜島の猫社会は意外にバイオレンスだった。
さて、もう雨ふってるし、桜島まで来たなら鹿児島観光タスクは達成されたといっていいので空港に戻りましょうかと。 もう一度フェリーに乗るのもお金がもったいないし、国分(現・霧島市)まわりで一般道を行きましょうかと。20分くらいしか違わないし……みたいな。
いまにして思えば、仕事で寝不足な杉作さんが運転するのだから、そうしないほうがよかったのかもしれない。
やや雨足が強くなったなか、桜島が噴火。最初に気付いたのはまたもジュニア(音は聞こえなかった)。
桜島で見る噴煙は鹿児島市で見るものよりずっと迫力があったけど、あいにくの雨で写真は上のものだけ。
桜島黒神埋没鳥居|桜島観光写真|鹿児島観光
http://kagoshima.pmiyazaki.com/sakurajima/03_torii.htm
帰路
旧隼人町の少し前で、杉作さんが
「さすがにやばい」
と言って 20 分ほど仮眠。寝てるあいだ、ジュニアにスマホのゲームで遊ばせるなど。
杉作さんは子供にゲーム機を与えてないけれども
「おれ、けっこうゲームとくい!」
なんだそうですよ。幼稚園や習い事の先々にスマホやタブレットがあるからね、いまは。
昼食。鹿児島ラーメン。帰路で立ち寄りそうな店の中からスタンダードそうな鹿児島ラーメンの店をちゃんと調べていた。
想定通り、スタンダードな鹿児島ラーメンだった(写真はチャーシューメン)。
鹿児島ラーメン みよし家
http://www.kagoshimara-men.co.jp/
ここでジュニアが頼んだお子様セットにチャギントンのおもちゃがついてて、おかげでずいぶん助かった気がする。 杉作さんが空港で仕事しなきゃならない状況だったのだけど、ずっとオモチャに夢中で退屈する→泣くのコンボが発生せずにすんだ。
飛行機の座席は3列シートで、行きも帰りも窓側からジュニア、杉作さん、私でとっていた。
そしたら帰りの便に乗る前にジュニアが
「帰りはおやじの隣じゃないほうがいいな」
て言うの。
で、私を見ながら、
「だって、帰ったらなかなか会えないんでしょ?おやじはいつでも会えるけど」
と。
ぐうかわいい。欲しいもんないか?おっちゃんなんでも買うてやるで~である。大人キラーか。
空港へは搭乗便の出発2時間前についた。レストランでドリンクバーを頼んで、杉作さんは仕事。私はジュニアの相手。 茶しながら2時間ほど待つなんて大人にはなんでもないけれども、子供には辛かったっぽい。
チャギントンで遊んだり、私とトランプしたり、スケッチブックにらくがきしたりしてごまかしていたが、だんだんと
「ねー、つぎどうするのー?」
「ここでなにするのー?」
「まだここにいるのー?」
の間隔が短くなっていった。
子供には、時間をつぶすという概念がないのだろう。
そんなこんなで、川畑さんにお線香もあげられたし、鹿児島も堪能できたし、ジュニアは人生初の飛行機を体験できたし、 ケガもなく戻ってこれましたという話でした。
なお、旅行先でも寸暇を惜しんで描いたかいがあって、杉作さんの原稿は間に合ったそうです。よかったよかった。