古民家園を期待すると物足りない。実態は古民家が多めの郷土歴史資料館
訪問日は 2016-10-29。
もしや城址では?と夢を見て鶴ヶ丸八幡神社を訪問したり、芝川第一調節池を見てびっくりしたり、古民家なんだけど古民家としてより自然体験の活動拠点として利用されている見沼自然の家を見た日。
その「見沼自然の家」を見たあと、こんどは古民家を見学施設として整備している「浦和くらしの博物館民家園」へ行きました。
旧高野家住宅
おせんべいの製造・販売をしていた商家。
江戸末期の建物で、浦和宿の中山道の現存商家としては最古だそうな。
江戸では防火対策として瓦葺きが奨励されてましたけど、浦和宿あたりだと江戸末期の商家でも茅葺きが残ってたんですね。
江戸を舞台にしたマンガだと、農家より商家の方が史料として役に立つんですよね。
旧綿貫家住宅
肥料・荒物商だった家で、置かれているモノも明治時代のそういう関係のが多いですね。
壁面のところどころに横木があるけど、なんのためかは謎。はしごでもなさそうだし。
旧野口家住宅
和尚さんが住んでいた家だそうです。典型的な四つ間取り農家と同じ間取り。禅宗で兼農してたのかもしれない(ただの空想)。
アワビの貝殻は現代になって取り付けたものだそうで、当時からのものではないとのこと。なぜそんなことをしたのか説明は無し(ぉぃ)
門のたたずまいは、農家とはちょっとちがうよ、という主張がうかがえます。
間取りはこの地方の江戸末期の典型的民家の間取りですが、土壁ではなく漆喰ですからね。軒の深いせがい造りは、雨で漆喰壁が傷むのを防ぎたかったのかもしれません。
手前の囲炉裏のある生活空間の畳には縁《へり》がありませんが、奥に見える「デイ」と(写ってませんがその右にある)「オク」の畳には縁《へり》があります。
基本的に座敷に上がるのは禁止なので、古民家園としての私の評価はだだ下がり。
綿貫家のこれなんか座敷に上がって撮ってるように見えるでしょうが、実は土間に突き出た框《かまち》にデジカメを置いて撮ってます。
旧武笠家表門
わたしが行ったときにはアワビの貝殻はありませんでしたが、いま浦和市のページを見ると、アワビの貝殻が付けられています。
なんのためにやってるの……?せめて説明して。
浦和くらしの博物館民家園>旧武笠家表門
https://www.city.saitama.jp/004/005/004/005/003/003/p001862.html
旧蓮見家住宅
次! 旧蓮見家住宅。さいたま市域に残されている民家では現存最古。
なんか継手のサンプルが展示されてたけど、座敷に上がれないんだから、その位置だとよく見えないでしょうが(怒っています)。
そもそも、ここに継手の展示がいる?っていうやつで。
せっかくのさいたま市最古で三間取りも面白い古民家なのですが、印象が悪くなりました。
あと、蓮見家住宅も私が見たときに屋根にアワビの貝殻はありませんでしたが、市のページを見ると、ここにも付けられてしまったようです。
さすがに気になって検索してしまった。
茅葺き職人のブログ: 茅葺き現場日誌@禅定寺 アーカイブ http://www.kayabuki-ya.net/notebook/cat7/
ようするに、鳥よけの気休めとして、キラキラ光るアワビの貝殻を屋根に取り付けるというハックが京都から滋賀にかけてあったのだそうな。
理屈はわかったけど、京都から滋賀にかけての文化を関東の古民家に歴史を無視してとりつけるのはいかがなものだろう。 そもそも気休め程度のものだし。
古代蓮
おお、埼玉で有名なアレでしたか。ついつい「古代進」と空目してしまいます。
旧浦和市農業協同組合三室支所倉庫
浦和くらしの博物館民家園の「博物館」の部分。旧浦和市農業協同組合三室支所倉庫。名称が長い。
国の登録有形文化財。もともとは干瓢問屋の倉庫として建築されたもの。現在は博物館として活用。
ようするに江戸時代~戦前の民具の展示であって、目を見張るほどの展示品はありません。 まあ、無料の施設に高望みしてはいけない。
感想
やっぱり座敷に上がれる古民家が一棟もなかったので、残念な古民家園という印象を強く抱いてしまいました。
せめて一棟でも、座敷に上がれる古民家があればね……
ていうか、浦和くらしの博物館民家園という名称がよろしくないと思うのですよ。
この名称からいわゆる古民家園を期待して行ってしまったのですが、門や倉庫を除くと4棟。
これは古民家園としてはちょっと物足りない。
「見沼郷土歴史資料館(移設古民家あり)」だったら、逆に
「4棟もある!」
と感激したのかもしれません。
むずかしいもんです。
人間のココロはめんどくさい。
単に天気が陰鬱な晩秋の曇り空だったせいとか、「芝川第一調節池」や「見沼自然の家」が思いのほか良かったので、感激に使えるエネルギーが減っていたからかもしれません。
天気のいい日に再訪したら、評価も変わるかもしれませんね。とくに商家ふたつは史料的にはありがたい存在ですから。
さいたま市/浦和くらしの博物館民家園
https://www.city.saitama.jp/004/005/004/005/003/index.html