『筒井康隆自薦短編集(3) 日本以外全部沈没』
『筒井康隆自薦短編集(3) 日本以外全部沈没』読了。 筒井康隆作品はほとんど読んでおらず、近いうちに読んでみる、と公言していたので。
「虚人達」「間接話法」が近所の図書館で見当らなかったので、 あおきさんご推薦の「バブリング創世記」を含む作者自薦短編集(パロディ編)から読むことにした。
感想。当たり外れが大きかった。 コンセプト第一な作風が鼻につくことが多かったのは、同族嫌悪なのだろうか。 著名な作家を指して(自分と)同族呼ばわりするのは自惚れが過ぎまくりだが。
以下雑感。
- 火星のツァラトゥストゥラ
- そのオチが書きたかっただけちゃうか?と思ったら巻末解説で 「オチが最初に出来て、全体を作っていった」とあった。 出だしとオチは良かったが後半の展開はイマイチ。
- 日本以外全部沈没
- 面白い。パロディだから当然なんだが、しっかり小松左京していると思った。
- ケンタウロスの殺人
- SFミステリ。種明かしがつまらないのはミステリとして、どうかと。
- 小説「私小説
- 私小説憎しの念が強すぎてあまり笑えない。 作者自ら肝とした老小説家が女中を犯すシーンはたしかに迫力があった。 ダークなオチに、やや引いた。
- ホルモン
- 星新一『セキストラ』のパロディかと思ったが、違うらしい。さほど。
- フル・ネルソン
- これは良かった。わけのわからなさが心地良い。
- モダン・シュニッツラー
- 良くなかった。最後のわけのわからなさがぞっとしない。
- デマ
- 読みづらい。苦労して読んでも、さほど。 システムいじり系としては、壊したシステムが生かされてないように思えた。
- バブリング創世記
- この短編集の中では白眉。暗唱する人が幾人か現れたというのも頷ける。
- 裏小倉
- くどい。そこが良いのかもしれんが、自分はダメだった。
- 諸家寸話
- 事実らしいので、特に何も。星新一が大作家なのに金の話ばかりする、というのが笑えた。
- 読者罵倒
- 発表当時は凄かったのだろう、とは思った。発表当時に読んでたら、衝撃を受けただろう。
- 筒井康隆のつくりかた
- 全体的に散漫な感じがした。
『バブリング』『フル・ネルソン』『日本以外全部沈没』は、
文句無しに傑作だった。他は、
「偉大さはわかるんだけどー」
といった感触。
今の若いマンガ好きが大人になって初めて手塚を読んだ感想、みたいなもんか? その例えはちょっと違うか。