現存天守最強の天守という評価もある、松江城をこの目で確かめに行った。
訪問日は 2017-01-01。
国宝入りした松江城。今が旬の城ということで、訪問しました。
先着 50 名かそこらが、天守最上階から初日の出を拝められるらしかった。 しかし、12/31 の備中高松城秀吉本陣跡への登山、米子城の登山で予定以上に披露していたので、 早起きはあきらめて、朝6時まできちんと寝ることにした。
初日だぁ?あんなのはただの太陽光線だ。目に見える電磁波だ。
てくてく歩いていると、松江城が見えた。正直に言うが、松江市は城下町として、とくに心に響く景観ではなかった。
しかし、松江城と言えばスト2のリュウステージの背景になった城である。
いい撮影ポイントがあったので、松江市に対する印象もちょっとよくなった。
お城へ着くと、初日を待つ人たちが、歴代ライダー集合とか歴代戦隊集合みたいなことになっていた。
おお!そうか!天守からの初日の出は先着 50 名限定だが、曲輪からの初日の出は特に制限なしなのか。
となると、空の明るさ的に、初日の出まで、あとわずか。やはり見たくなるのが人情。
登った瞬間、歓声が沸いた。ちょうどぴったり、初日の出た瞬間だった。
待つ末の松枝にかかる初日の出 ←うれしさに、思わずヘボ句も出る。
いろいろあって、年越しソバもすすることなく、ひとりさびしくカプセルホテルで迎えた 2017 の元旦だったけど、ここにきてやっと気が晴れた。
初日を見た後は、まず天守をぐるりと回りながら写真撮影。むろん、雑ハイパーラプスのためだ。
一周したら、初日目当ての市民は、天守を見物もせずに帰宅していた。地元民にとっちゃ、そんなもんかもね。
あれだけの人がいて、残っていたゴミはこれだけだった。民度が高いぜ>松江市!
さて、事前に調べた情報では松江城天守の登閣時間は 8:30 からだった。初日のあと一周したとはいえ、まだ8時前だ。
どうしよう……と思ったが、初日のためにこの日はすでに天守が開いてて、すぐに入場できたのだった。というわけで、時間を無駄にせず、とっとと入場。
>国宝 松江城ホームページ:利用案内
http://www.matsue-tourism.or.jp/m_castle/userguide/index.html
最強かどうかはともかく、体験型アトラクションとしては最高の感動の天守
それでは、天守内部へ。
中に入ると、このように床にところどころ、銅板で補修したあとがあった。
洋釘であるところを見ると、明治以後の修理だろう。まてよ、解体修理されたはずだよな。いつだっけ?昭和 25 年?じゃ、この銅板は、そのあと?ンモー。戦後なのにー。戦後(終戦直後)だから?
鉄砲狭間。質実剛健で有名な天守だけど、さすがに平行四辺形にひしゃげてるのは雑すぎねえか?と思ったり。
しかしこれも、堀尾氏時代からそうなのか、昭和の解体修理のあとの組み直しが雑だったのか、わかんねぇな。
さっきの銅板修理を見ちゃうとね……。
壁はリサイクルじゃなく、解体修理のたびに新しく作り直しだろうから。
地階。天守、というか櫓は矢倉とも書いた通り、武器庫の役目があった。したがって、天守が倉庫として使われてるのは、実に心躍るものがあった。しかも暗い。これが中世の雰囲気があって、実に良かった。
かすがいや、包み鉄を見て、集成材だったのか!と誤解する人が多いそうだ。私もまんまと、そう、誤解した。集成材に見えるよな、これ。出雲大社の柱が集成材だったのも有名だし。古来より鉄生産で有名な地方だから、太い柱のとれる木材が無かったんやろうな……と、実に納得のいく誤解理論を自分の中で打ち立ててしまった。あぶねぇ、あぶねえぇ。
高さでは松本城に及ばないが、床面積では松本城をしのぐ、現存天守二位なのだそうだ(一位は言うまでもなく姫ちゃん)だから、展示物もやたら多い。
たしか3階。江戸時代、昭和35年、昭和50年の模型が置いてある。古くはなっているが、力作だ。
この階は、もう少し照明が明るくてもいいのではないかと思った。あと、昭和のどっちかは引退させて平成版に変えたら?とか。
松江城天守についてマンガを描くとしたら、避けることはありえない石落。いろいろ思うことはあるが、ネタバレは避け、いまはだまっておこう。
来る人、来る人、つぎつぎに、くちぐちに
「えーっ!まだ上があんのーっ!?」
と嘆く、人間観察がゆかいな階だ。
内部5階+地階なので、実質6階建てエレベータ無しなのだが、外から見たら4重天守なので、それほど登ることになるとは思わないのだな。
展示するコンテンツが無いのはわかるが、よその城のことは(その天守にいる間は)考えたくない。ディズニーランドにいるときにUSJのことを考えたいとは思わない。
これは2階あたりだったか。望楼型は外観の重数と中の階数が一致しないので、妙な位置に梁が来る。
そして最上階。はわああああああ!!なにこの多幸感!(こういう写真になりがちなスマホカメラの特性をあえて使ったというのもあるけど)
暗い地階の密やかな空気、中世の匂い。軍事施設であったという湿っぽさ。生と死。幕末の無用の長物化。6階まで急な階段を登らされたつらさ。そういったさまざまな、物理的な暗さ・心理的な暗さ・肉体疲労…を通り抜けたあとの、これだ。この開放感。体験型アトラクションとして、現存12天守中、最高かもしれんと思った。
かもしれん、と言ったのは、まだ私は弘前城に行ったことがないからだ。というわけで松江城は最上階の楽しさでは暫定一位だ。
ん……あー、いや、犬山城も捨てがたいな。どっちかなー。悩むー。
俺は、琵琶湖と霞ケ浦と中海と宍道湖を見た男になったのだと思うと誇らしい。あとは印旛沼とサロマ湖だな。
いつもだったら、あと1時間は城域を回って、遺構を楽しむのだけど、この日はそうじゃなかった。
というのも、島根ともなると、なかなか行ける県じゃないので、どうしても出雲大社に行きたかったのだ。 メッカ巡礼した男になりたかったのだ。別に神道の信者ではないけど。
それに、お城好きを続けていく限り、いつかは再び島根に再訪して、月山富田城へ行かねばならないのだ。 そのとき、松江城(二回目)を楽しめばいい。これだけの城、一回ですましちゃいかん。
というか、人生が無限でお金も有り余っていたら、現存12天守のある街は、すべて一か月くらいは滞在して、飽きるまで堪能するのが理想なのだ。そういうわけにいかない、この人間と言うはかない生き物の悲しさよ。
そんなわけで、お濠の遊覧もせず、コンビニおにぎりをほおばり、電車に飛び乗って出雲に向かったのでした。
本当、自撮りに慣れてない。(シェーは、自撮りとはまた別ジャンルだと思っている)
直線的な勾配(右)と反りのある勾配(左)の混在。
こうなると、武者返しはもちろん、建物を支えるための荷重の分散という説も怪しくなる。
それ以外の、第3の理由を推測する必要があるのではないか。
……という取材成果を作品にしたくて、波瀾万城シリーズの新作・松江城編の制作資金をクラウドファンディングで募ってみましたが、目標金額に達しませんでした。残念。